
バナナフィッシュで引用された“本”一覧 |『キリマンジャロの雪』ヘミングウェイ…
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「バナナフィッシュ」をアニメで見終わりまして、小説の引用など気になってので調べてみました。
特に「キリマンジャロの雪」のセリフが好きです。
タイトルについても、色々な意味がありそうだったので、考察します。
ヘミングウェイなど作家との関連性はどこにあるのでしょうか?

①引用された本
・アーネスト・ヘミングウェイ『キリマンジャロの雪』
第13話でアッシュが自分の死について語るとき、この物語を引用していました。
なぜ何のためにここに迷い込んできてしまったのか、それとも何かを求め力尽きたのか。戻ろうとしていたのか、それとも高みへ登ろうとしていたのか、いずれにせよ2度と戻れないことを知っていたに違いない。
といったようなセリフを口にしています。
それを聞いた英二は、人間は豹(ヒョウ)にない知恵を持って運命を変えることができると伝えています。
アッシュが足を踏み入れてしまった世界で殺されそうになっているとき、アッシュは自分の現状について、何かを求めていたのか、迷い込んできてしまったのかはわからないが、2度と戻れないと死を覚悟したのだと思います。
そしてそのアッシュの言葉を聞いて、英二は、でも君は豹じゃないのだから運命は変えられると、生きて欲しいと願うとても感動的なシーンになっています。
・アーネスト・ヘミングウェイ『海流のなかの島々』
第18話でブランカが紹介していました。
「人の孤独について書かれた本」だそうです。
ヘミングウェイの遺作で、孤独に苦しむ男性が戦争の被弾で亡くなる物語です。
“孤独”というのも1つのテーマになっているということでしょうか。
・J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』
自身が短編集の中から選んだ9つの作品です。
↓↓↓
・バナナフィッシュにうってつけの日
・コネティカットのひょこひょこおじさん
・対エスキモー戦争の前夜
・笑い男
・小舟のほとりで
・エズミに捧ぐーー愛と汚辱のうちに
・愛らしき口もと目は涙
・ド・ドーミエ=スミスの青の時代
・テディ
この9つの作品の中に“バナナフィッシュ”の元となった作品が入っているということです。
この作品が、J・D・サリンジャーの影響を受けていることがわかります。

②「タイトル」を考察
- 第1話「バナナフィッシュにうってつけの日」
J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』より
バナナフィッシュを探す。バナナが入った穴に引き寄せられる魚。バナナは暗喩。悲劇を表す。
→バナナフィッシュとは何かを問いかける
- 第2話「異国にて」
ヘミングウェイの短編小説より
怪我を負った兵士たちの物語。戦争の悲惨さよりも恋愛における傷の方が辛いという恋の幻滅をテーマにしている。
→ゴルツィネらに捕まり、逃げる姿を兵士たちに例えている
- 第3話「河を渡って木立の中へ」
ヘミングウェイの短編小説より
南北戦争下で負け続ける南軍だが、終わった後の憩いのために厳しい戦いに立ち向かおうとする。
→刑務所に入るアッシュが戦いに挑むきっかけを得る
- 第4話「楽園のこちら側」
F・スコット・フィッツジェラルドの小説より
(アメリカの小説家)
倹約的なピューリタンの価値観が変わり、享楽的に生きる若者の恋愛を描いた作品。
→英二の人生が安全から危険に変わる
- 第5話「死より朝へ」
トーマス・ウルフの短編集より
(アメリカの作家)
※内容の詳細はわかりませんでした(ーー;)
→(タイトルから推測)新たな物語の始まり
- 第6話「マイ・ロスト・シティー」
F・スコット・フィッツジェラルドより
(短編小説とエッセーが書かれている本です。)
人生という一生の中で起こりる喪失感と自己破壊への欲望を描く。
→故郷に戻り、父親と再会。アッシュの過去がどう生き方に影響したか。
- 第7話「リッチ・ボーイ」
F・スコット・フィッツジェラルドより
浪費する人生は自分の存在を消してしまう。彼には誰か、何かを確信させてくれる存在が必要だった。
→アッシュと家族の関係性?
- 第8話「陳腐なストーリー」
ヘミングウェイの短編小説より
→(タイトルから推測)古臭く、つまらない計画が実行される
- 第9話「ワルツは私と」
F・スコット・フィッツジェラルドの妻、ゼルダ・セイヤー・フィッツジェラルドの長編作品より
バレエに没頭する人生。何かから逃げたいのか、安心できる場所に居続けたいのか、それとも自分で人生を作り上げたいのか。
→ショーターとアッシュの関係性
- 第10話「バビロンに帰る」
F・スコット・フィッツジェラルドより
アルコールと金によって堕落した男が一人娘への愛で再生していく物語。
→英二への愛がアッシュを再び動かす

- 第11話「美しく呪われし者」
ゼルダ・セイヤー・フィッツジェラルドの長編作品より
絶頂の人生が破滅していく物語。
→アッシュたちの破滅を予感?
- 第12話「持つと持たぬと」
ヘミングウェイの小説より
アメリカの大恐慌が起こり、貧困と暴力に悩まされる持たぬ人々と裕福で幸福に見える持つ人々の様子を描く。
→アッシュと英二の別れ?
- 第13話「キリマンジャロの雪」
ヘミングウェイの小説より
→アッシュ「もう戻れない」、英二「運命は変えられる」
- 第14話「夜はやさし」
F・スコット・フィッツジェラルドより
ある精神科医が入院中のある娘と恋におち、結婚。若い女優はその夫を好きになり、また妻であったその娘は自身の状態を回復し、別の男性と恋におちる。献身的な人生が、変わりゆく周囲によって荒んでいく。
→献身的な英二がアッシュを失う
- 第15話「エデンの園」
ヘミングウェイの小説より
(ヘミングウェイの最後の作品であり、未完。)
楽園のような結婚生活に、一匹の蛇とも言える一人の美女が現れる。小さな衝突が破滅を生む。人間の心の奥の葛藤が見える作品。
→英二とアッシュの関係をかき乱そうとする月龍
- 第16話「哀しみの孔雀」
F・スコット・フィッツジェラルドより
(マイ・ロスト・シティーに収録)
家族が徐々に負に陥って行く。借金を抱える父。公立への転校を余儀なくされる娘。それぞれの人生が少しずつ転落していく。
→アッシュの周囲も含め、転落に向かっていく
- 第17話「殺し屋」
ヘミングウェイの短編小説より
二人の殺し屋に追われるも、逃げ回るのを拒否し、殺されるのをただ待つ主人公。
→アッシュの心情を表す
- 第18話「海流の中の島々」
ヘミングウェイの長編小説
※ブランカの愛読書、、、孤独について書かれています。
→ブランカの孤独とその意味
- 第19話「氷の宮殿」
F・スコット・フィッツジェラルドより
マイ・ロスト・シティーに収録
アメリカの南部に暮らす女性がその暮らしに満足できず、北部での幸せを求めるも、結局は南部に帰ってくる。合わない世界に戻ってきてよかったのか、それとも以前の満足できない生活に戻ってしまったと捉えるか。
→ブランカは敵か味方か
- 第20話「征服されざる人々」
ウィリアム・カスバート・フォークナーの小説より
南北戦争時代のインディアンと白人の物語。
→英二とアッシュ。英二がアッシュを救う
- 第21話「敗れざる者」
ヘミングウェイの短編小説より
闘牛で戦う男の物語。何度も牛に打ちのめされるも立ち上がる。彼には戦うことしか生きる術がないから。
→アッシュがこのまま戦うことを決意をする
- 第22話「死の床に横たわりて」
ウィリアム・カスバート・フォークナーの小説より
ある一家の母親の死とその埋葬までの移動を描く。一人の死によって起こるさまざまな人間の感情の変化が語られる。
→もし英二が死んでしまったら、アッシュはどのような心情の変化をし、行動に出るか
- 第23話「誰がために鐘は鳴る」
ヘミングウェイの長編小説より
ある青年が命じられた橋の爆破とある女性との恋模様を描く。仲間のために自分を犠牲にする姿は、個人は全体の一部であることを示している。つまりタイトルは鐘が一人のためではなくあなたのためにも鳴っているという意味を持つ。
→アッシュは仲間のために犠牲になる
- 第24話「ライ麦畑でつかまえて」
J・D・サリンジャーより
成績が悪く高校を退学になった主人公。世の中の偽善に絶望し、田舎へ逃げ込もうとするも、妹の無邪気な愛に救われ、人間愛に目覚めていく。
→アッシュが英二によって救われたことを示す

③引用された“作家”一覧
- アーネスト・ヘミングウェイ
- J・D・サリンジャー
- トーマス・ウルフ
- F・スコット・フィッツジェラルド
- ゼルダ・セイヤー・フィッツジェラルド
- ウィリアム・カスバート・フォークナー
失われた時代を代表する作品ばかりでした。
アメリカが舞台になっていることから、戦争やそれによる人々の変化など歴史的なストーリーも含まれているのだと思います。
※失われた時代、、、第一次大戦後のアメリカの迷える世代を示す言葉。
④まとめ
長々と書いてしまいましたが、1話ごとに考えさせられる内容ばかりでした。
それぞれのタイトルが小説のタイトルになっていたりと、深く読み込めるストーリーになっていました。
簡単に考察したので、多少間違っている箇所があるかもしれません。
少しずつ引用された本を読んで、感想を書きたいと思います。
色々な感情の変化や行動に哲学的な考えが取り込まれていて、とても面白い作品でした。
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