
ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」|少年と社会|あらすじと解釈|タイトルの意味
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ヘルマン・ヘッセの『デミアン』という小説を読みました。
その書き方と人間の心の奥をつくようなストーリーに惹かれて、ヘルマン・ヘッセが好きになりました。
今回2つ目として『車輪の下』を読みました。
私の人生で1番好きな小説になったといっていい作品でした。
少年の人生から、人間の生き方を知り、社会と人間の関係について考えさせられました。
簡単なあらすじ
主人公はハンス。その賢さから、町から期待され、猛勉強をして神学校の入学試験を受けました。ヘルマン・ハイルナーという友人もできるのですが、学校を去るよう処分を受け、ハンスと疎遠になってしまいます。
さらに学校では成績がおち、神経衰弱として医者から診断を受けました。学校を去ることになり、機械工として働くことになりました。エンマとの恋愛関係も経験しますが、どこかうつろなハンス。
職人仲間とお酒をのみ、泥酔した日、川に落ちて死んでしまうのでした。
「車輪の下」の意味
「車輪」は社会を表していると思います。
周囲の期待、親の期待、責任、、
逃げづらい、逃げられない環境がハンスにはありました。
なにせ町から期待されてしまっているので、途中で「もう無理です」とは言いにくいんですよね。
そういう「期待」の下で生きることを、この本は書いていると思います。
ハンスはなぜ死んだのか?
最後のハンスの死について、たくさんの意見があります。
彼の人生には、学校での辛い思い出、友人関係のもつれ、父親との関係、恋愛のこじれ、職場の環境など、色々な悩みがありました。
私たちと同じように、または少し大きな問題かなと思います。
そんな人生で、何が彼の死をもたらしたか。
私は「疲れ」じゃないかなと思います。
お酒を飲んでいたのも、お酒を飲むとその人の本性って出るじゃないですか。
だからお酒を飲んで、本心にあった疲れ、人生終わりたいという気持ちが、事故であり、自殺であり、現れたのかなと感じました。
なんか、色々あると疲れるじゃないですか。
それが勉強であれ、友達関係であれ、恋愛関係であれ、毎日生きてて、何もすることがなくても疲れる。
個人の経験が影響してしまっているかもしれませんが、これが私の解釈です。
あとは、完全な「事故」でもいいと思ってます。
もし事故だとしたら、それはそれでハンスにとってよかったことだなと思って。
車輪の下に生きるハンスに必要なのは、その人生からの解放かなと思います。
それがなされたことで、終わることができた。
そういう結末も、大いに想像できました。
現代問題にも通ずる
今の時代、「生きづらい」ってよく聞くじゃないですか。
貧困、DV、病気、介護負担、いじめ、ハラスメント、労働環境。
こういう苦しみの中にあるのは、資本主義の期待があると思うんです。
「もっと、もっと」という感情や「これくらいできるだろ」という期待が辛いんです。
失敗が許されないというか、できない人はののしられるというか。
そういう環境、期待の下に生きているから辛いと思うんです。
だから、「車輪の下」に共感する人はいっぱいいると思います。
辛い人生にとことん共感して、自分を見つめ直してみると、少しだけでも心が落ち着くような、そんな小説だと感じました。
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